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TKI人権DD支援サービスのご案内

TKI人権DD支援サービスのご案内

2022年11月10日、FRONTEOとの共催オンラインセミナー「国際ビジネスと人権-人権デュー・ディリジェンスの取組事例と外国人技能実習生の問題」を開催しました。

企業の担当者に人権DDについてお話を伺うと、これから検討を始める企業からは、日本には人権DDの法規制があるわけでもなく、何をすればよいかやり方がわからない、ESGやSDGsの対応に手一杯で人権に特化した人権DDまで手が回らない、経営に関わるプロジェクトでどこから手を付ければいいか、サプライチェーンまで含む大掛かりな話なので、どこまでやるべきかわからない、という声を聞くことがあります。

他方、検討が進んでいる企業からは、海外事業含め人権対応はコンサルを起用して進めているが、定めた人権方針をどう運用していくか、見直してみると国内対応がエアーポケットだったという声や、ほかにも、サプライチェーン対応をどうしていくか、購買対応をどうしていくか、外国人技能実習生の課題にどう取り組むかなどといった具体的な悩みも聞かれます。

今回は、セミナーのポイントを振り返りながら、国際ビジネスと人権意識の高まりの背景、企業に求められる人権問題への対応、当事務所の人権DD支援サービスについてご案内します。

※ セミナー動画につき、FRONTEO Legal Link Portalにてご視聴いただけます。(会員様限定/会員登録無料
国際ビジネスと人権-人権デュー・ディリジェンスの取組事例と外国人技能実習生の問題 Part 1
国際ビジネスと人権-人権デュー・ディリジェンスの取組事例と外国人技能実習生の問題 Part 2

■ 国際ビジネスと人権意識の高まり

近年、企業の社会的責任の一環として、「ビジネスと人権」の問題がクローズアップされています。ターニングポイントは、2011年に国連人権理事会で「ビジネスと人権に関する指導原則」(「国連指導原則」)が採択されたことです。それ以降、欧米を中心に、人権DDの実施や人権問題への取り組みに関する開示を義務付けたり、強制労働などに関わる製品の輸入を禁止するといった法制化の動きが進みました。さらに、EUは2022年2月に人権・環境デュー・ディリジェンス(「DD」)の義務化を加盟国へ求める指令案を発表しています。これに伴い、日本政府(経済産業省)も、2022年9月に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(「人権尊重ガイドライン」)を策定しています。

その間、アジアのパーム油やアパレル製品にかかる強制労働をめぐる欧米での輸入差し止め、制裁措置、ミャンマーでの軍事クーデターに伴う現地合弁事業の解消撤退など、日本企業にも影響のある国際ビジネスをめぐり人権リスクが顕在化する事案が生じています。また、国内では外国人技能実習生の処遇について、国際的な批判とともに、労働関連法違反の指摘が増えています。

欧米流の人権の価値観を非欧米地域、経済発展が先進国と異なる新興国や途上国に押し付けることの是非については、様々な意見があるところです。しかしながら、欧米に拠点がある企業や欧米企業と取引がある企業のみならず、全ての企業にとって、こうした人権問題への対応を誤れば、国際的・社会的な批判を招いたり、紛争に巻き込まれるなど、企業価値に大きな打撃を受けることにつながります。こうした人権意識の高まりを背景に、適切な人権DDを実施し、人権リスクへの積極的な取り組みを行うことが企業経営上の重要な課題となっています。

■ 今、国際社会で問題とされる人権問題

国際社会で問題とされる人権問題は、一般的な感覚以上に広範に及びます。例えば、児童労働・強制労働に加え、移民労働者・外国人労働者に対する人権侵害の問題です。企業としては、自社・グループ会社のみならず、グローバル・サプライチェーンにおける労働環境の実態を把握し、是正に向けて取り組む必要があります。特に日本については、外国人技能実習制度への国際的な批判が高まっています。近年、下請企業での外国人技能実習生の人権侵害の問題が社会的に注目を浴び、発注者である大手コーヒーチェーンや大手コンビニにまで波及しました。自社・グループ会社のみならず、サプライチェーンにおける外国人技能実習生の実態を早急に把握し、人権尊重、技能実習法その他の関連法令の遵守を徹底する必要があります。

また、テクノロジー(AIなど)は、生活を便利にする反面、プライバシーの侵害、監視の強化、アルゴリズムによる差別など、人権問題に繋がる可能性が指摘されています。また、環境問題と人権も大きなテーマとなりえます。企業活動によって、大気・土壌の汚染、水質汚濁など、環境汚染を引き起こし、地域住民から健康で快適な生活を送る権利を奪うことが問題となるのです。企業に求められる責任の範囲は「気候変動」にまで拡大する可能性もあります。

腐敗・贈収賄も人権問題と捉えられます。腐敗・贈収賄は、社会の持続的な発展、法の支配を危うくするもので、特に法の支配の確立していない新興国・途上国では人権問題にも密接に関わります。企業としては、贈収賄、強要、その他の形態による腐敗への関与を避けるだけでなく、腐敗と戦い、グローバル経済の透明性を高める姿勢が求められます。

■ 企業に求められる人権対応とは?

こうした人権問題について、国際的な人権規範の文脈で企業に求められるのは、静かに遵守するということではなく、積極的なアクションです。具体的には、(1) 公に人権方針を策定することによるコミットメント、(2) 人権DDの実施、(3) 是正措置の実施の3点です。これは人権を自ら獲得してきた欧米型の発想であり、日本企業にとってみると特別な対応が求められます。

例えば、人権方針の策定によるコミットメント(ビジネスと人権の認識)については、経営層による意識づけ(コミットメント)、従業員への啓発・周知、取引先へのポリシーの周知などが含まれます。また、人権DDの実施のため、自社・グループ会社のみならず、グローバル・サプライチェーンに関するリスク評価、調査・分析、対応すべきリスクの優先順位付け・対応検討を行う必要があります。そのうえで、問題が発見された場合の是正措置として、苦情処理メカニズム、言語面でのグローバルなヒアリング対応、実効的な救済のためのステークホルダーの巻き込みなどが想定されます。

これらの対応は、一義的に決まったやり方があるものではなく、企業ごとの実情に応じて、課題を抽出して効果的な対策を検討していくことが求められます。それゆえ、「人権DDで求められるものが理解しにくい」という声もあるのですが、本セミナーに対するアンケート結果では、「どのように透明性を確保して社会に還元していくのか、といった考え方を伺い、対応についての考え方が良く分かった」という声をいただきました。

■ 約5割の企業が検討を開始済み、未着手の企業には急務の課題

アンケート結果によると、セミナー参加企業では約5割が人権DDの検討を開始済みと回答しています(表1参照)。未だに検討に着手していない企業には、急務の課題だといえます。ジェトロの2021年度「海外進出日系企業実態調査」を参照すると、人権の問題を経営課題として認識している企業の割合がやはり過半数(58.6%)に達しており、うち欧州地域(70.1%)が最も高い結果となっています。具体的な課題として、進出先の人権関連法令への対応が必要なケース、児童労働、長時間労働、紛争鉱物資源など、欧米では人権侵害リスクへ対応する必要性が国内ビジネス以上に顕在化している状況がうかがえます。

(表1)参加企業による人権DDの検討状況

■ 具体的な取り組み方がわからない企業が4割弱

人権課題についての意識が高まっている一方で、アンケート結果では、人権対応に向けた取り組みの課題として、主に「具体的な取り組み方がわからない」(37.80%)、「十分な人員・予算を確保できない」(36.59%)という点が挙げられました(表2参照)。

(表2)人権対応における参加企業の抱える課題

人権DDの実施のためには、まずは社内の推進体制の構築が必要です。自社・国内外のグループ会社のみならず、サプライチェーン(購買先、さらに二次購買先)を含む、グループ全体でのグローバルな対応が求められます。このような取り組みを推進するためには、経営陣のコミットメントを得たうえで、法務・コンプライアンス部、サステナビリティ推進部、購買部など、関連部署を横断した推進体制を構築すること、そして司令塔となる事務局を決めておくことが重要です。

さらに、グローバルな人権リスクへの対応にあたっては、海外現地法人任せでの対応ではなく、日本本社としてのグローバルな人権対応方針を明確に示し、十分に現地事情を把握したうえで、適切な方針策定を行い、海外各拠点での現地対応についていかに連携していくかというプロセスが重要な鍵を握ります。特に法制化が先行する欧米拠点の現地規制への対応と、実際に問題が起きている新興国・途上国の問題を、日本本社から俯瞰してつなげて対応できる体制を整えることが重要です。

■ TKI・人権DD支援サービス

当事務所では、国連指導原則のほか、経済産業省の人権尊重ガイドラインなどのガイドラインに準拠して、日本企業向けに人権DD支援サービスを提供しています。取り組み方がわからない、十分なリソースを確保できない、といったニーズに応え、企業の関連部署と緊密に連携して、人権DDの取り組みをご支援します。課題を絞り込んで、例えば、外国人技能実習生の課題についてのリスク評価と取り組み支援といったご相談にも対応しています。

お勧めしているのは、段階的な取り組みでPDCAを回しながら精度を高めていく方法です。いきなり完成形を目指すとどこから手を付けていいかわからなくなるので、社内の人権リスクの把握から開始して、段階的な取り組みでPDCAを回しながら精度を高めていくことがコツとなります。自社・グループ会社、サプライチェーンを含む人権リスクの評価(リスクマッピング)と必要な場合の救済措置の実施を、段階的に実施していきます。

例えば、最初のステップとして、関係各部署や外部専門家と連携し、外部専門家の支援を得ながら、各事業領域やグループ会社の事業内容と所在国・地域、人員構成や取り扱う原材料・製品などに基づいて各社の人権リスクを見積もり(リスクマッピング)、リスク対策などの状況を確認することから始めることが考えられます。

次のステップとしては、リスクマッピングにおいて相対的にリスクが高いと考えられた事業領域やグループ会社に対して、踏み込んだアンケート調査、ヒアリング(Webインタビュー)や現地調査を実施します。アンケート調査では、人権リスクが高い事業活動の有無やリスク低減措置の実施状況について、質問状を送付し回答を入手します。そのうえで、懸念のある事項についてヒアリング(Webインタビュー)を行ったり、さらに必要に応じ現地調査を行って、関連する文書の確認、現地従業員に対するインタビュー、就労環境の確認などを実施します。

そのうえで、人権DDの結果を踏まえ、是正の必要があれば是正(救済)措置を実施し、人権方針や人権報告書などの公表を通じて、人権尊重へのコミットメント及び取り組みを発信するご支援をします。