【MARR Online】第6回連載:M&A契約の中で「最も重視されない条項」の真価
【MARR Online】第6回連載
M&A契約の中で「最も重視されない条項」の真価
- 紛争解決条項とM&A紛争の現実 -
M&A情報・データサイト「MARR Online」にて代表パートナー森 幹晴弁護士の連載第6回が掲載されました。
今回は、「M&A契約の中で「最も重視されない条項」の真価 - 紛争解決条項とM&A紛争の現実」について執筆しています。(掲載日:2021年1月13日)
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本文の一部を抜粋し、ご紹介します。
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M&A契約の末尾には紛争解決に関する条項が入っている。例えば、本契約のM&Aに関連する紛争はどこそこの国の裁判所又は仲裁機関で解決する、といった内容である。この紛争解決条項は、契約交渉の場面では、譲渡価格、補償の上限・下限、表明保証の範囲、前提条件などと違い、熱心に交渉されることはまれである。しかしながら、不幸にも買収完了後に対象会社に問題が発覚して売主と買主との間に紛争が発生してしまった場合、どこの国でどのような手続きで紛争を解決するかを定める紛争解決条項の真価が発揮される。
今回は、日本企業による海外での買収後に対象会社に問題が発覚し、実際に紛争に発展して国際仲裁による解決がなされた事案を紹介し、M&A紛争における実務的な勘所について解説する。
紛争解決条項は重要か
クロスボーダーM&Aでは、国内案件に比べて、紛争解決条項の重要性が高い。国内案件であれば、たとえ紛争解決条項がなくても、民事訴訟法の定める管轄ルールに従って、日本国内で日本語の通じる公平な裁判所による裁判を受けることができる。裁判で勝訴判決を得ても相手方が任意の履行を行わない場合には、民事執行法の定める手続きに従って判決を執行し、国家権力により強制的に損害を回収することができる。
それでは、海外でのM&Aをめぐる紛争の解決を現地の裁判所に委ねるとどうだろうか。例えば、米国の民事裁判で陪審員の判断を仰ぐことは、職業裁判官に慣れた日本企業には不安かもしれない。また、アジアなどの新興国では、裁判所は汚職にまみれ、裁判は遅々として進まず数年かかることもある。そのため、米国の裁判所を紛争解決機関とするときは陪審裁判を放棄する合意をしたり、アジアなどの新興国では、現地の裁判所を避け、中立な第三国で定評のある仲裁機関での仲裁を選択することが多い。
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