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2023.07.28

【TKI国際商事紛争・仲裁プラクティス座談会】TKIは国際商事紛争・仲裁の「地図を描く」 – 言語の壁を超えて解決に導くチームの力

グローバル化の進展やビジネスの複雑化とともに国際的なビジネス紛争が増加しており、その解決手段として国際仲裁や訴訟を選ぶ日本企業が増えてきています。東京国際法律事務所(以下、TKI)では、国際的な紛争に関して豊富な経験をもつ弁護士たちが、多くの日本企業に対し問題解決に向けたサポートを行っています。

今回は、TKIの国際商事紛争・仲裁プラクティスをリードする山田広毅弁護士クリストファー・スチュードベーカー外国法事務弁護士松本はるか弁護士に、近年の動向や国際的な紛争において問題となる点などについて伺いました。


山田広毅弁護士
2006年弁護士登録、2019年4月TKI設立

国内大手法律事務所での勤務経験を有し、国内外のM&A・投資・合弁、国内外の紛争解決、不正調査その他のコンプライアンス関連、競争法、再生可能エネルギーその他のプロジェクト関連、スタートアップ支援等をよく扱っている。

クリストファース・チュードベーカー外国法事務弁護士
2004年ワシントン州弁護士登録、2006年ニューヨーク州弁護士登録、2020年8月TKI入所

米国法律事務所での約15年の勤務経験を有し、自動車、金融サービス、製薬、テクノロジー等幅広い分野のクロスボーダー紛争解決、企業コンプライアンスや社内調査、M&Aや企業間取引において多くのクライアントを支援している。


松本はるか弁護士
2005年弁護士登録、2023年2月TKI入所

米国大手法律事務所において、建設工事、医療機器、不動産取引等、幅広い分野の訴訟、国際仲裁や国際調停において、国内外の企業を代理。国内の法律事務所における実務経験も有し、労働や保険法関連の訴訟法対応、民事再生や会社更生を含む倒産事件の対応等、幅広い業務を扱っている。

国際的な紛争のトレンドとその解決手段として仲裁を選ぶメリット

国際的なビジネス紛争に関する案件について、最近のトレンドや特徴を教えてください。

スチュードベーカー外国法事務弁護士:日本企業は従来、海外企業との紛争をできるだけ穏便に法的手段を使わずに解決したいという傾向が強かったのですが、近年では法的な手段の活用も視野に入れるケースが増加しています。また、これまで日本企業はどちらかというと海外企業から訴えられる被告側の立場でした。ただ、最近では日本企業も原告側になるケースが増えてきています。これは、被告としての経験を蓄積してきたことで、国際訴訟・仲裁が交渉ツールのひとつとして有効であるという認識が広まってきたからだと思っています。

山田弁護士:この傾向は、対海外企業の取引だけでなく、海外プロジェクトに参画する日本企業間のトラブルでも同様です。国際的な取引における紛争に対しては、その解決手段として仲裁を選ぶようアドバイスすることがほとんどです。

松本弁護士:近年では特にエネルギー業の案件が増えていますね。コロナ禍による入国制限などがあるなかプラント建設工事が遅延したケース、資材価格が高騰したことにより当事者間のリスク分配にひずみが生じたケースなど、契約締結時には想定していなかった事態が起きてしまったことが原因として考えられます。

山田弁護士:特徴としては、プロジェクトの規模が大きいこと、プロジェクト期間が長期であることの2つがあると思います。プロジェクトが長期であるほど想定外のことが起きますし、規模が大きいほど問題も大きなものとなります。エネルギー業や建設業は特にそうした性質が強い業界ですからね。

国際仲裁を紛争の解決手段として選ぶメリットはどこにありますか。

松本弁護士:訴訟の場合、一審で判決を得ても不服申立によって長期化してしまう可能性がありますが、仲裁は原則として終局解決であるため迅速な解決を目指すことができます。また、訴訟とは異なり仲裁は一般的に非公開で行われるため、紛争自体が公になることを避けられ、レピュテーションリスクや競争上のデメリットを低減できます。仲裁人を当事者が選べる点も仲裁のメリットです。仲裁では、ビジネスや事案についての専門的な知見や実績のある人を当事者自らが仲裁人として選ぶことができます。こうした理由から、訴訟よりも仲裁のほうがビジネスとの親和性が高いといえます。

国際的な経験と多様性をもつTKIだからこそ解決できた事例

TKIが国際商事紛争・仲裁に注力している理由を教えてください。

山田弁護士:前提として、TKIは世界で勝負するビジネスパーソンや企業がグローバルな競争で勝てるようサポートすることをミッションに掲げています。我々の仕事は、平時有事に関わらず、究極的には当事者間の利益調整であると考えています。紛争はまさに当事者間の利害対立が先鋭化した場面であり、紛争は法律家として最もその腕が問われる領域といえます。TKIの立ち上げ当初から平時も有事も頼りになる存在でありたいという思いを持ち、そうした能力・スキル・経験を持つ仲間たちを集めてきました。

スチュードベーカー外国法事務弁護士:チームのメンバーは、国際的なバックグラウンドや資格、経験を持っています。そのため、尋問・交渉・書面作成などの高度なクロスボーダー紛争実務をすべてハンズオンでシームレスに対応することが可能です。また、全員が国内で執務しているため、日本の商習慣をよく理解し、日本語で、時差の障壁もなく効果的かつ的確に協議することができる点も、TKIの特徴だと思っています。

山田弁護士:スチュードベーカー外国法事務弁護士は日英のバイリンガルであり、クライアントとも日本語で円滑なコミュニケーションを取ることが可能です。紛争解決手続は、専門用語も多く、個別の手続きが、全体の中でどのように位置づけられるかが分かりにくいことも多いです。そもそも国や文化が異なるなかで対応していく必要もあり、当事者であるのにもかかわらず、何をやっているのか、何のためにやっているのかわからなくなってしまうという状況に陥りがちです。

我々の仕事は、そうした状況において地図を描き、明確に方針を示すことだと考えています。これを行うためには、手続きの深い理解に加えて、関係者の文化を理解している必要があります。多様なメンバーが参画しているTKIの強みは、ここにあると思っています。

TKIによる特徴的な解決事例があれば教えてください。


スチュードベーカー外国法事務弁護士:他の外資系の法律事務所に依頼されていた米国の訴訟案件で、依頼者が、全体像とプロセスの詳細が見えず、必要な費用の見通しが立たないため不安に感じてTKIへご相談いただいたケースがあります。私が関与し日本語で密なコミュニケーションを取りつつハンズオンで手続きを進めたことにより、解決に向けた見通しを立てることができました。

松本弁護士:依頼案件の中には、大手法律事務所に依頼しようとしたものの、「日本の裁判所には管轄がなく、訴訟を提起できない」と断られてしまった案件にも対応し、無事に日本で訴訟係属しているものもあります。TKIとしては法律構成を工夫すれば管轄は問題にならず提起できると判断したためです。国際的な紛争解決における知見や経験という面でも、TKIは高い競争力をもつチームだと思っています。

山田弁護士:国際的な紛争ではコンテクストを相手方とも共有して現地の弁護士とうまく協働しながら進める必要があります。この際、複雑かつ高度な専門性が必要になります。円滑に進めていくためには、私たちが「架け橋」となって、相手方に「こいつらは話ができるやつだ」と思ってもらわなければなりません。実際に、当事者同士が直接交渉を進めていた結果、数年間も未解決となっていた事案において、私たちが直接現地に出向いて交渉を担当したことにより数日間の協議で合意できたというケースもあります。

「紛争の匂い」がしたら、なるべく早めに弁護士に相談することがポイント

TKIによるサポートはどのようなクライアントにおすすめしたいですか。



山田弁護士:まずは、国際的な紛争の領域でさまざまな経験をされてきたお客さまです。数々の事務所を試した結果、TKIの使い勝手のよさを評価いただいているケースは多いです。コンテクストを理解して地図を描き、透明性を保ちつつ方針を提示することの価値を評価していただけているのだと思っています。

こうしたTKIの強みは、国際的な紛争の経験がなく、「そもそも何が起きているのかすらわからない」というお客さまにとっても有効だと考えています。「海外で訴えられてしまい何が起きているのかわからない」、「ブラックボックスになってしまっている」といった状況でも、TKIが入ることによってクリアにわかりやすくしていくことができます。

スチュードベーカー外国法事務弁護士:お客さまが一番避けたいことは「サプライズ」です。法務部の担当者は経営層への説明義務があるため、突然多額の費用が発生したり、敗訴になりそうだったりという状況は絶対に避けたい状況です。TKIとしてはお客さまにとってのサプライズを極力減らせるようサポートをしていきたいと考えています。全体像や費用発生の見通しを示しながらステップ・バイ・ステップでTKIと一緒に進めていくことで、現場のみなさまの対応業務も楽になっていくと思います。

松本弁護士:日本の法律事務所の中には、国際的な紛争となると途端に海外事務所に頼り切りで、ただの連絡係になってしまっている事務所もあります。一方、私たちTKIのチームは海外事務所のサポートを得つつも全体の戦略は依頼者と実質的に協議しながら決定していくため、お客さまがすべて理解・納得したうえで進めていくことができます。結果として、お客さまご自身がよりよい形でディシジョン・メイキングできる状態を確保できるようになります。

山田弁護士:一度私たちとお話しいただければ、「地図を描く」ということが具体的にどういうことなのか、ご理解いただけると思っています。国際的なビジネス紛争に巻き込まれて困ったというときには、まずTKIへご相談していただきたいです。

松本弁護士:紛争になりそうな匂いがしたら、なるべく早めにご相談していただきたいですね。弁護士に依頼せず交渉で事を収めたいという気持ちもよく理解できますが、交渉を纏めるために自社にとって不利な契約を結んでしまったり、かえって状況が悪化してしまったりといったこともありえます。早めにご相談していただけると、交渉状況を踏まえた戦略的なアドバイスもできますし、万が一、法的手続きに入った後で活用できるよい証拠を残すためのアドバイスもできます。

スチュードベーカー外国法事務弁護士:これに加え、日本企業が忘れがちなポイントとして、弁護士依頼者秘匿特権があります。弁護士依頼者秘匿特権とは、依頼者と弁護士とのあいだの法的相談内容に関するやり取りの開示を拒否できるというものです。

海外での訴訟や国際仲裁では、争点との関連性や重要度の高い文書について、相手方に開示を求めることのできる制度があります。「文書開示手続」と呼ばれていますが、これは日本企業が当事者である場合も例外ではありません。もっとも弁護士から法的助言を得るために行われたコミュニケーションについては、弁護士依頼者秘匿特権という制度によって開示を免れることができます。そこで、文書開示が求められるような内容でも、早期に外部の弁護士を入れ、重要なコミュニケーションについては弁護士依頼者秘匿特権の対象としておくことによって開示を回避できるケースもあります。弁護士に依頼せず社内で解決しようとすると、社内での議論やリスク評価など、自社にとって不利な情報を相手方に開示しなければならなくなる場合もあるため、なるべく早めにご相談いただくことをおすすめします。

クロスボーダー領域で日本一の法律事務所を目指して

TKIは国際的な紛争の領域において、どのような存在の事務所・チームになっていきたいですか。


松本弁護士:お客さまとの信頼関係を築くことで、お客さまの事業にとって最重要の案件においても我々の判断を社内での最終的な拠り所としてもらえるようなチームにしていきたいですね。「TKIがそういうのであればそうなんだろう」と。

スチュードベーカー外国法事務弁護士:英語では“go-to”といいますが、国内およびクロスボーダー訴訟や仲裁において「頼りになる」法律事務所を目指しています。外資系法律事務所や国内大手法律事務所などあらゆる選択肢と比較してお客さまのなかでNo.1となるような事務所になっていきたいです。

山田弁護士:TKIとしては、国際的な紛争だけでなくクロスボーダーの領域において日本でNo.1の事務所になることを目標に置いています。国際的な紛争の文脈でも、複雑な問題に直面した際にはまずTKIへ相談してみようと思っていただける存在になっていく必要があると考えています。

AIやリーガルテックなどのテクノロジーの進歩によって、弁護士が提供すべき付加価値は今後大きく変わっていく可能性があります。弁護士業務の本質が問われる時代になってきているということです。弁護士の本質とは、異なる利害を持つ複数の当事者が落としどころを見つけて問題解決できるようサポートすること。特に、国際的な紛争は利害が一致しないという状況が精鋭化しているため、弁護士の本質が最も問われる領域といえます。

複雑に利害が絡みあう状況の中で異文化を理解したうえでプロアクティブに問題を発見し、密なコミュニケーションを取って円滑に遂行していくという国際的な紛争の解決に向けたプロセスは、今後ますます弁護士の仕事として求められるようになるはずです。

国際的なビジネス紛争は今後間違いなく増えていくと考えています。しかし、対応できる弁護士の数はまだまだ足りていません。TKIは、一緒にこの領域に挑戦していけるメンバーを求めています。

(文:周藤 瞳美、取材・編集:周藤 瞳美・松本 慎一郎、写真:岩田 伸久)