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2022.05.02

【岩崎 大弁護士 × パヴィトラ アイヤル外国法事務弁護士対談】日本とインドのギャップを埋めるTKIのチームワーク

東京国際法律事務所(以下、TKI)は、「真のインターナショナルな事務所」——こう語るのは、インドと英国の弁護士資格を持つパヴィトラアイヤル外国法事務弁護士(インド法)です。パヴィトラ外国法事務弁護士は、インド・ムンバイの大手法律事務所で3年ほど勤務した後、2010年に来日。日本語を学び、2013年に日本の大手法律事務所へ入所します。その後は、インドをはじめアジア諸国のM&A案件を手掛けてきました。

5年間で5兆円を投資する目標を岸田文雄首相が表明するなど盛り上がりを見せるインド市場。その特徴や日本企業が投資を行う際に発生する課題は何か、TKIはそこに対してどのように挑戦していくのか、パヴィトラ外国法事務弁護士と岩崎大弁護士に聞きました。

互いの個性を認め、One Teamとしてクライアントに価値を提供する

パヴィトラ外国法事務弁護士はインドと日本の法律事務所で経験を積まれています。日本で働いてみていかがですか?

パヴィトラ外国法事務弁護士:前職の法律事務所では、インドの資格を持つ弁護士は私1人だけで、インドに関する大きな案件も担当していました。日本企業や日本人メンバーと共に働くなかで、日本の法律やカルチャーの理解が深まったのはもちろんですが、インドと日本の違いが自分のなかで明らかになっていくことで、自国の法律やカルチャーについても改めて見つめ直す機会となりました。もちろん責任は大きく、たくさんのチャレンジがありましたが、そのぶん法律家としても個人としても学びが多く、自身の成長という意味で日本は非常に良い環境でした。

パヴィトラ外国法事務弁護士がTKIへ参画された経緯について教えてください。

パヴィトラ外国法事務弁護士:2018年に出産し、スケジュール的にM&Aの仕事が難しくなったため、パートタイムで国際仲裁やM&Aのエグゼキューションを担当していましたが、やはり元のようにトータルでM&Aを担当したいという気持ちが強く、パートタイムからフルタイムに戻ることを考え始めました。TKIを知ったのは、ちょうどその頃です。TKIは日本の良い面と海外の考えが取り入れられており、真の意味でインターナショナルな事務所です。インドの弁護士資格を活かしてM&Aの仕事をするのに最も良い事務所だと感じました。

岩崎弁護士:TKIがこの先さらに拡大していくためには、同じパッションを持ち、同じゴールを目指す同志が必要です。そして、価値観が多様なチームだからこそ、クライアントのニーズへの理解が深められます。パヴィトラ外国法事務弁護士はまさに同志であり、お互いに強みと弱みを補完しあえる関係を築いていけると考えました。

パヴィトラ外国法事務弁護士:インドの弁護士として日本で働くには、家族や事務所のメンバーのサポートが大切です。「インクルージョン」を大切にするTKIでは、それができると思いました。参画して半年ですが、メンバーの言葉や態度にそうした文化が現れていると実感しています。多様なメンバーが互いに個性を認め、一体感を持って働いている状態で、クライアントには、One Teamとしての価値を最大限提供できるよう意識しています。

インドは魅力的な国であり、今後も投資は増えていく

日本企業によるインド投資の現状と課題について教えてください。

岩崎弁護士:日本では国を挙げてインド投資を推し進めていく流れが出てきています。インドではスタートアップ・テック人材も増えており、人口・年齢構成・人柄の面でも魅力あふれるマーケットに面白い人たちが多く集まっている状況です。

パヴィトラ外国法事務弁護士:インド人の日本に対するイメージはとても良いですね。歴史的に見ても日本とインドの関係は深く、相互にリスペクトしあえる感覚を持っています。政府同士の関係も今はとても良いと思いますので、これからさらに投資が広がっていくでしょう。

岩崎弁護士:ただ、日本企業から見たインドに対する解像度の低さは課題です。インドは1つの国のように見えて、都市部・農村部、南部・北部等、地域によって大きく異なります。いろいろな国が集まっていると捉えたほうが良いです。ステレオタイプに物事を見るのではなく、企業や人そのものを見て投資を考える必要があるでしょう。

パヴィトラ外国法事務弁護士:規則もセクターごとに分かれており、インドの弁護士から見ても複雑です。海外の企業からするとなおさらでしょう。カルチャーギャップの大きさも課題です。特にインドでは、創業者オーナー(プロモーター)の影響力が強いため、投資の際にはその人たちの会社に対する思いを理解することが大切です。

また、近年の米中対立やコロナによる影響を契機に、外資規制強化が行われていることにも注意が必要です。インドと国境を接する国(パキスタン、中国、ネパール、ブータン、ミャンマー及びバングラディッシュ)の企業や投資家がインドに投資する場合には、政府とのやりとり・承認が求められるようになっており、日本企業にも影響が出ています。

難易度の高い案件であることが多いものの「必ず登れる山」

案件を進めるにあたって、具体的にどのような問題が発生しますか。


パヴィトラ外国法事務弁護士:日本企業がインドの会社に投資する場合、合弁会社をつくるケースが一般的ですが、会社の構造上の違いから、スケジュール通りには物事が進みません。たとえば、日本企業は取締役会の日程から逆算して準備を進めていたのに、最後になってインドのプロモーターがそれを覆すようなコメントをする場面がありました。また、インド税制の複雑さも相まって、税務面の問題だけで2か月間交渉をしたこともあります。

2つの会社で1つのことを成し遂げるにはPMI、そしてそれを意識したデューデリジェンスや契約交渉が重要ですし、紛争になった場合のことも想定しておく必要があります。インド企業との間での紛争は大変なコストが掛かるため、楽観的な見立ては危険です。

岩崎弁護士:日本企業によるインド企業の一部事業の買収案件を担当した際には、まさに現地プロモーターの意向と日本企業のニーズ、税務上の課題等を踏まえて調整していかなければならない状況に直面しました。現地の法律事務所や税務アドバイザーとタッグを組みながら丁寧にコミュニケーションを取って進めていきましたが、大きなカルチャーギャップがあるなかでは、後手に回らず、また手数を増やして先手を打っておくことが非常に重要です。

我々としては、日本企業を先回りして、すべてが思い通りになるわけではないけれども「必ず登れる山」とガイドしていくよう心掛けています。

パヴィトラ外国法事務弁護士:日本企業は紳士協定のような合意を望むことが多いですが、それは後々のコストにつながります。すべての細かなイシューまで書面化する必要はありませんが、たとえば、デッドロック条項やトリガー条項等の重要な事項はクライアントの意向をよく理解したうえで丁寧に書き込んでいくようにしています。

日本とインドをつなぐ"Trusted Advisor"へ

最後に、今後の展望をお聞かせください。

岩崎弁護士:TKIは、チーム一丸となって日本企業とインド企業のギャップを埋めていきます。そのためには、グローバルプラットフォームとして成長していくことが欠かせないと考えています。

パヴィトラ外国法事務弁護士:私個人としては、日本におけるインドのアンバサダーになっていきたいです。この目標を仕事で実現していくためには、法律だけではなくカルチャーを含めて日本とインドとのギャップを理解し埋めていくこと、そして、TKIというチームの力を活かして弁護士として成長していくことが必要だと考えています。

インド市場の攻略等クロスボーダー領域で挑戦されるクライアントの皆様の課題を解決できるよう、また、クライアントの"Trusted Advisor"(信頼されるアドバイザー)となれるよう、日々丁寧なコミュニケーションを心掛けていきたいと思います。

(文:周藤 瞳美、取材・編集:周藤 瞳美・松本 慎一郎、写真:岩田 伸久)