【コラム】FCPAのためのリソースガイド【第2版】
FCPA のためのリソースガイドの第2版(the Second Edition of the Resource Guide to the Foreign Corrupt Practice Act)についてご紹介します。
(コロナ禍における海外腐敗行為防止法(FCPA)の動向/企業コンプライアンス・プログラムの評価ガイダンス)
なお、下記の情報は、米国法律事務所 Winston & Strawn より提供いただいています。(2020年7月14日付POST)
FCPA のためのリソースガイドの第2版
the Second Edition of the Resource Guide to
the Foreign Corrupt Practice Act
2020年7月3日、米国司法省(U.S. Department of Justice)と米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission:SEC)は、企業や個人向けのFCPA関連のリスクを方向づける現行のガイダンスを更新し、より詳細に記載したFCPAリソースガイドの第2版(以下「2020年FCPAリソースガイド」)を発表しました。 2012年に発表された初版と同様に、2020年FCPAリソースガイドは、米国の法執行機関のうち最大の2つの機関である米国司法省とSECの執行と運用に関し、広範で有用なガイダンスを示しています。
米国司法省が2020年6月に発表した企業コンプライアンス・プログラムに関する最新のアップデート(「企業コンプライアンス・プログラムの評価ガイダンス」参照)に続く2020年FCPAリソースガイドのこのタイミングでの公表は、COVID-19の最中であっても、米国司法省とSECがFCPAの執行に対し尽力していることを強調しています。つまり、 2020年FCPAリソースガイドは、米国司法省の他のコンプライアンス関連の更新と合わせて、この不安定な時代にコンプライアンスが果たす重要な役割を強調しています。
2020年FCPAリソースガイドには、以下の過去8年間の主要なアップデートが記載されています。
- 米国司法省の「FCPA企業・エンフォースメント・ポリシー」や「企業コンプライアンス・プログラムの評価ガイダンス」の更新等、米国司法省のエンフォースメント・ポリシー
- 幇助責任に関する新しい判例法やSECの不正利益の賠償に関する最近の最高裁判決等を反映した更新
- 米国司法省とSECのエンフォースメント戦略の例となる最近の多くのFCPA関連の事例
重要なのは、新しい2020年FCPAリソースガイドでは、仮定のシナリオを提示するのではなく、特定の状況に対する政府のアプローチを説明するために、実際の事例と結果を取り入れていることです。
【2020年FCPAリソースガイドの主な追加事項】
網羅的ではありませんが、以下、2020年FCPAリソースガイドの主な追加事項についてご説明します。
- 機能的な企業コンプライアンス・プログラムの重要性
2020年FCPAリソースガイドでは、2020年6月発表された米国司法省の改訂版企業コンプライアンス・プログラムについての評価に反映された、コンプライアンス・プログラムに関する米国司法省の最新のガイダンスを盛り込んでいます。このガイダンスでは、企業がデータ、監査、ホットラインを利用してプログラムの有効性を継続的に監視・評価し、その後、新たな、あるいは進化するコンプライアンスリスクに対応するためにプログラムを改訂する必要性が強調されています。2020年FCPAリソースガイドでは、米国司法省のガイダンスをさらに、(1)機密報告と内部調査(2)継続的改善:定期的なテストとレビュー(3)合併・買収:買収前のデューディリジェンスと買収後の統合(4)不正行為の調査、分析、是正という4つの明確なカテゴリーに分類しています。 - 適切な内部統制の重要性
2020年FCPAリソースガイドでは、「内部統制とコンプライアンスは同義ではないが、同様の考慮事項が適用される」と説明されています。2020 年 FCPA リソースガイドとその模範事例は、基礎をなす実行可能かつ実質的な贈収賄の容疑がなくても、米国司法省が内部統制を追求する可能性があることを改めて示しています。加えて、2020 年FCPAリソースガイドでは、効率的な内部統制の確立の失敗に関連した告発は「すべての人」に適用され、贈収賄罪に関する司法権の制限の対象とはならないことを明確にしています。 - M&Aと承継者の責任
2020年FCPAリソースガイドでは、特に、買い手が堅強なコンプライアンス・プログラムを有し、同プログラムを実務上速やかに実行することのM&Aの利点を明らかに認識しています。一定の場合には、十分なデューディリジェンスが困難かもしれませんが、FCPAリソースガイドでは、買い手企業が当該問題に関する任意的開示を待つことの利点も説明されています。 - 自主的な不正行為の開示と起訴の取下げ
2020年FCPAリソースガイドでは、米国司法省のFCPA違反企業に対する執行方針を明示的に参照しており、この方針の下では、企業は、不正行為の自発的な開示が行われている限り、起訴の取下げの対象となる可能性があります。2020年FCPAリソースガイドでは、経営陣が贈収賄のスキームに関与していた場合や、その他の悪化する状況が存在していた場合でも、企業が起訴の取下げの対象となる可能性があり、最終的に起訴が取下げとなった例を引用しています。 - 非金銭的贈与
改訂されたガイダンスでは、通常、少額の贈答品は、米国司法省とSECに注視されることはありませんが、理解し難い非金銭的贈答品は、FCPAの下で「価値のあるもの」として疑われる可能性があることが改めて強調されています。これらのケースには、被告による外国公務員の子供の学費の支払い、外国公務員への高級車の輸送、会社の業務とは関係のない外国公務員の旅費の支払い及び外国公務員の親族への贈答品の提供というケースが含まれています。 - モニターの強制
ブライアン・A・ベンツコウスキー米国司法省刑事局司法次官補が2018年に定めた「刑事局での問題におけるモニターの選択」に関する米国司法省のガイダンスを採用し、2020年FCPAリソースガイドでは、米国司法省が企業モニターを課す方法を説明しています。当該米国司法省のガイダンスでは、(1)企業と公衆に対する潜在的な利益及び(2)モニターのコストと企業の業務への影響という要素につき、米国司法省が評価することを説明しています。これらの要素は、発見された不正行為の種類や広汎性、企業の既存のコンプライアンス・プログラムの質との関連で考慮されます。最後に、2020年FCPAリソースガイドでは、民事事件でも監視員が必要となる可能性がありますが、1人の監視員がすべての要件を満たすことができるように、米国司法省とSECがその要件を調整することに留意しています。
2020年FCPAリソースガイドは、FCPAの執行における新たな方針や根本的な転換を示すものではありませんが、米国司法省とSECが過去数年にわたって執行にどのようにアプローチしてきたか、また、これらの機関が今後、FCPA関連の不正行為や企業の対応をどのように見ていくかを反映したものとなっています。COVID-19に関連する膨大な法執行上の課題の中でも、米国司法省とSECは、FCPAコンプライアンスの重要性を強調するために時間を割いています。
(執筆担当者:岩崎)
※本記事の内容は、一般的な情報提供であり、具体的な法的アドバイスではありません。
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